「旅と鉄道」復活

「旅と鉄道」2011年11月号












乗り鉄雑誌の元祖「タビテツ」こと「旅と鉄道」が復活しました。既に復活第1号は9月21日に発売されておりいささか旧聞に属する話題で恐縮ではありますが、嬉しいことなのでアップしておきたいと思います。

タビテツは鉄道ジャーナル社より1971年に創刊されました。「旅と鉄道」のタイトルどおり鉄道を中心に据えた旅の雑誌という位置付けでした。当時は乗り鉄なんて言葉もなく鉄道趣味というと写真と模型が主流派だった頃です。そんな中、鉄道に乗ることに主眼をおいたタビテツは非主流派の拠り所として手堅く読者を掴んでいたように思います。

私がタビテツに出会ったのは‘75年の秋号が最初だったと思います。その中のあるルポに私は嵌ってしまいました。そのルポというのは門司から福知山まで二人の記者が特急「まつかぜ」と当時の最長鈍行列車824列車に乗車し同時並行でレポートするというもの。「まつかぜ」担当が今ではグルメ本や推理小説も執筆する金久保茂樹氏。一方、824列車に乗り込んだのが芦原伸氏。この芦原氏こそ新生「旅と鉄道」の編集長なのであります。

そんなタビテツも残念ながら'09年に休刊となります。折からの出版不況にのまれてということのようですが、企画がマンネリ化していたことは確かでしょう。「18切符の攻略法」的な特集ばかりではねえ。また、素材となる鉄道の変貌も逆風になったのではないかと感じます。合理化の嵐に晒された鉄道現場にはタビテツが標榜してきた“汽車旅”の世界なんてなくなってしまってますから。

そのタビテツが2年半の休眠期間をおいて復活したわけですから興味も高まります。鉄道を取り巻く状況が変わらない中いかなる秘策で汽車旅の魅力を発信しようというのでしょうか。
新生タビテツは鉄道ジャーナル社の手からは離れて朝日新聞出版が発行・発売元となります。つまり従来よりも強力な営業力をバックボーンに販売に力を入れようというところでしょうか。世は正に鉄道ブームでパイは広がっているわけですから老舗である「旅と鉄道」のブランド力をもってすれば勝算ありというところかも知れませんね。

私も早速復活第一号を手にしました。内容は事実上の創刊号ともあってご挨拶的な構成が目立ちます。総花的でズシッと読み応えのある記事はありませんでしたが、この点は次号から改まっていくでしょう。
興味深かったのが「御三家に学ぶ」という特集記事。宮脇俊三、種村直樹、竹島紀元という鉄道趣味でのビッグネーム3氏それぞれの鉄道との向き合い方を紹介しています。いずれも個性的な方々ゆえ好き嫌いはあろうかと思いますが、同じ鉄道趣味を志向する者としては気になるところではあります。ただし、この手の先人に学べ的な記事を多用するのは危険かも知れません。鉄道ファンは各々自分こそは日本一の鉄道愛好家であると自負している人種なので「誰々に学べ」なんて言うと「大きなお世話」と反発を招きかねませんから。
宮脇俊三さんの長女である宮脇灯子さんが紀行文を寄せているのも面白いところ。中身はともかく宮脇俊三さんを最も近いところで見ていた人の文章だけに宮脇ファンは注目です。
あと、芦原編集長自ら筆を執った「ばたでんの故郷、出雲国へ」も興味をそそりましたが、洋酒メーカーとのタイアップ色が強いのには苦笑しました。824列車に乗っていた芦原氏は薄汚いジーパンによれたTシャツといういでたちだったと記憶していますが、紙面に登場する氏はなにやらコジャレたお姿。偉くなられただけのことはありますね。

新生「旅と鉄道」は隔月刊で奇数月の21日に発売されるとのこと。是非乗り鉄の感性を刺激する記事をどんどん発信してもらいたいところです。

この記事へのコメント

  • manamana

    そう言えば最近見かけないと思っていたら、
    休刊だったのですね。
    御三家に学ぶの記事、ちょっと興味を惹かれました。
    2011年10月23日 07:14
  • サットン

    manamanaさん

    先代タビテツは季刊から月刊にパワーアップして間もなく休刊してしまいました。その頃は私も手に取ることはなかったですね。
    新生タビテツの健闘を祈りたいと思います。
    2011年10月23日 17:42
  • うたに

    >鉄道ファンは各々自分こそは日本一の鉄道愛好家であると自負している人種なので・・・

    すごい。確かに言われてみるとそうかも。妙に納得させられる一行だ。
    まあでも、自分流の楽しみ方で鉄道と接するというのはいいことですよね。

    でも、『人はそれぞれ違うから面白い』のですし、趣味に対する切り込み方の違いを理解しあうのも大切ですよね(^ ^ )
    2011年10月23日 18:21
  • やまびこ3

    こんにちは
    私は旧誌の創刊号からの読者でした。(毎号買ったわけではありませんが)最初は折からのSLブームに便乗する企画が多かったようでした。
    もちろん、復刊1号も買ってしまいました。この雑誌がこれからどの方向を目指すかわかりませんが、いつもでも御三家の時代ではないでしょうから、なんとか今の時代にふさわしい鉄道旅行誌を作ってほしいものです。
    2011年10月23日 18:28
  • まるたろう

    タビテツは、乗りつぶしマップの付録目当てで、増刊号の時だけ
    買っていました。
    休刊したのは知ってましたが、いつの間にか復刊していたんですね。
    また本屋で見て、内容がよければ買おうと思います。
    2011年10月23日 19:45
  • サットン

    うたにさん

    趣味の世界に浸っている人というのは鉄道ファンに限らず皆一国一城の主みたいなものですよね。似て非なる同好の士の行動を垣間見るのもまた楽しいものかと。このあたりをどう誌面に反映していくかが趣味誌の難しいところかと思います。新生タビテツに期待しましょう。
    2011年10月24日 09:59
  • サットン

    やまびこ3さん

    創刊号からの読者でいらっしゃるとはお見逸れいたしました!
    草創期のタビテツの誌面からは溌剌としたものを感じたように思います。今回紹介した芦原、金久保ご両名の他種村氏の文章も新鮮でした。
    でも、新生タビテツには過去を振り返っては欲しくないですね。ノスタルジーに浸っていては先細り必至でしょうし。年々旅情が薄れていく鉄道を料理するのは難しいでしょうが、ここは芦原編集長の力量に期待したいところです。
    2011年10月24日 10:14
  • サットン

    まるたろうさん

    まるたろうさんにとってタビテツとは「乗りつぶし地図」なんですね!? 私は逆にその頃にはタビテツからは離れていました。
    書店で目に留まれば一度手にとって見てください。
    2011年10月24日 10:20
  • 飛んでモアイ

    復刊号、気が付いたから、すぐに買ったけど、なんだかつまらなかったです。
    鉄道趣味なんて、皆それぞれ趣向が違うから、まとめるのが大変だと思います。
    押し付けられず、参考にするなら、いいのかもしれませんね。
    次号に期待を!!
    2011年10月25日 21:20
  • サットン

    飛んでモアイさん

    私も率直な感想をいうなら面白くなかったです。ま、名刺がわりの第1号なのでこんなところでしょう。次号に期待しましょう!
    2011年10月26日 16:40

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