![鉄道ジャーナル 2010年 05月号 [雑誌] 鉄道ジャーナル 2010年 05月号 [雑誌]](https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/51m02YIlTxL._SL160_.jpg)
- 作者:
- 出版社/メーカー: 成美堂出版
- 発売日: 2010/03/20
- メディア: 雑誌
◆驚きの新聞広告
3月23日付読売新聞大阪版の1面を見て驚いた。記事にではなく最下段の書籍広告にである。なんと「鉄道ジャーナル」の広告が掲載されているではないか! 長年ジャーナルを愛読しているが、今までこんな広告は見たことがない。家族までが「鉄道ジャーナルが広告出してるわ」と言ってるぐらいだから正に事件である。
さらに詳細に眺めると「発売元:成美堂出版」とある。ジャーナルは編集、発行、発売を一貫して鉄道ジャーナル社が行っているはずではなかったか。
「鉄道ジャーナル身売りか!?」と不安になりネット上でいろいろ調べるとWikipediaといくつかのブログが最近のジャーナルについて言及していた。それによると発売元の移行については1月21日発売の3月号より実施されているとのこと。このことに気付かなかったのは私だけだろうか。手元の2月号を見てもなんら告知は見当たらないのだが。
◆鉄道ジャーナルを取り巻く環境
今回の発売元移行を即ジャーナルの身売りかと短絡したのには理由がある。鉄道雑誌の現状に常々不安を感じていたからである。印刷媒体が斜陽の時代を迎え幾つもの雑誌が消えていく昨今、鉄道雑誌も例外ではないだろう。従来鉄道雑誌が取り扱ってきた鉄道に関する情報はネット上で簡単に入手できる時代となった。しかもほとんどタイムラグのない状態で得ることができるのだ。実際、先日アップした「鉄板がキハ189を紹介」は読売新聞の記事にリンクを張っただけの手抜き記事にもかかわらず当ブログとしては爆発的なアクセス数を記録してしまった。新車情報がいかに注目を浴びているかを実感できる事態である。ところがこの記事がジャーナルの紙面で見られるのは早くても1ヶ月遅れとなる。かなり厳しい状況と言わざるを得ない。
ただ、社会派鉄道情報誌を標榜するジャーナルは趣味誌としての色合いが濃い他誌とは一線を画する特色を持つ。つまり企画力次第でいくらでも生き残る途を模索できる可能性を持っているのである。
一方鉄道を取り巻く状況はというと空前のブームにあるといわれている。過去SLブームやブルトレブームがあったが、このところの盛り上がりはそれらの一過性のブームとはかなり性質の異なるものを感じるのである。先日の特急北陸廃止に群がった数千の人出、マスコミもこぞって取り上げていたが、このところダイヤが変わるたびに見られる光景ではないか。
こうして明らかに裾野を広げている鉄道趣味人口を取り込むには先述したように企画力とライターの文章力次第だと思われる。ただ残念ながら他誌を含めても文章のレベルが低下していると感じるのは私だけではあるまい。かつてのジャーナルには何度も読み返したくなる文章が並んでいたのだが。
◆私とジャーナル
どうでもいい話ではあるが、私と鉄道ジャーナルとのお付き合いについてこの機会に記しておこうと思うので御用とお急ぎでない方はお付き合いいただければ幸いである。
私が初めて購入したジャーナルはと本棚を見ると’73年10月号。私が小学生の頃。久しぶりにページをめくると正に隔世の感である。「ブルーリボン賞国鉄183系、ローレル賞小田急9000系」の記事が掲載され、初代JR東海社長の須田寛氏が国鉄本社旅客局営業課長として寄稿されている。種村直樹氏、檀上完爾氏ら創世記のジャーナルを支えたライターの名前も見える。ちなみに価格は380円、今のものと比べ印刷の質は恐ろしく劣悪である。
当時の鉄道誌といえば他に鉄道ファン、鉄道ピクトリアルなどが刊行されていたが、私がジャーナルに惹かれたのは名物記事ともいえる「列車追跡シリーズ」に魅力を感じたからだ。まだ見ぬ列車、まだ見ぬ駅に思いを馳せて何度も読み返したものである。情感豊かな文章のみならず掲載される写真もまた魅力的だった。車内の乗客の表情を生き生きと写し取った写真は列車追跡になくてはならないものだった。近年はプライバシー保護の美名の下この種の写真はまず見ることはない。
▲私の初ジャーナル 何度も読み返した痕が
◆鉄道ジャーナルに望むこと
生き残り策の一環として選択した今回の発売元移行であろうが、紙面にもHPにも何の説明もないようだ。発売元が変わっても読者には関係ないという理論だろうか。だとしたら大きな勘違いである。発売元から「もっと売り易い内容に」といった編集方針への干渉は排除できまい。ジャーナルらしさの喪失が懸念されるのだ。一鉄道趣味誌に身を落として欲しくないのである。
沈黙している故、様々な憶測も流れているようだ。当然だろう。
是非長年の読者との絆を大事にして欲しい。
その上で改善して欲しい点が幾つかあるが敢えて一つに絞るとジャーナルらしさの象徴ともいうべき列車追跡シリーズの原点回帰である。そもそも列車追跡は単なる同乗ルポではなかったはずである。一本の列車を通じて鉄道の現場で働く人々を、また沿線の実情を浮き彫りにしてきたのが列車追跡だったはずである。乗客の写真が撮り難いお寒い世の中になり、鉄道の現場も様変わりしたこととは思う。そこはプロのスタッフの実力と鉄道事業者との長年にわたる信頼関係をもって克服してもらいたい。単なる同乗ルポはネット上に幾らでも存在するのだ。裏を返せば列車追跡の充実こそ素人芸と差別化を図ることができるポイントではないか。
出版不況は当分続くことだろう。逆風を浴び続けることと思うが是非とも社会派の鉄道情報誌「鉄道ジャーナル」の健闘を期待する。
この記事へのコメント
Lionbass
どちらかというと平易な記事が多い「ファン」と、やや高度な内容の「ジャーナル」という住み分けができているのだと思ってましたが、変わって行くんでしょうか?
私のところは、鉄ネタか食べ物(ハンバーガーやお菓子)の話を書くとアクセスが増えるみたいです。^=^;;;
f14tomcat
阪急は学校と娯楽施設造ることにより、東急は住宅地を造ることにより乗車率をあげてきました。
私どもの運輸業界は右肩上がりは望めないのかなと貴記事をみて思う限りです。
テンやもん
「鉄道ファン」よりも「鉄道ジャーナル」の方が、何故か好きです。
旅心がくすぐられます・・・。(笑)
いそしぎ
新幹線の表紙と(やっぱり新幹線はこの顔が好き)、
もう30年以上も前の雑誌を大切に残されている事にnice!です。
manamana
まるたろう
ファンとジャーナル、正直いって、違いはないと思ってました。
詳細に読まないとだめですね。
それにしても0系の表紙、時代を感じますね。
あーちゃん&父
1ヶ月間の鉄道の流れをささっと知るなら「ファン」、撮る列車を決めるなら「ダイヤ情報」、そして将来の鉄道のことなど、ちょっと考えてみたいときは「ジャーナル」って感じですかねえ?
しかし成美堂出版に変わってしまったのですか…
内容はどうなんですかねえ?読んでみたいと思います。
のり
サットン
出版元の変更、せめて社告くらい打って欲しいですね。長年愛読してきた者としては寂しいです。
まあ、編集方針に急激な変更はないでしょうが、将来が不安です。現行の路線を維持してもらいと願っています。
Liobassさんのブログというと音楽、読書、旅、食べ物ですよね♪
サットン
やはり重要な情報は印刷物を頼ってしまいますね。電子書籍が徐々に普及しつつあるそうですが、アナログでないと困る分野もあると思います。その辺が雑誌生き残りの鍵なんでしょうね。
全体のパイが小さくなっている以上鉄道も厳しい経営環境にあるかと。新しいビジネスモデルを模索しないと。現代の小林一三や五島慶太の登場が望まれますね。車体のダウンサイジング、斬新なご意見ですね!そういえば航空業界はその方向で突っ走っていますよね。
業界関係者でいらっしゃるんですね。是非ともご健闘を!!
サットン
私も同じ理由でジャーナルシンパになりました。特に列車追跡シリーズは他誌にはない企画ですね。旅心をくすぐられました。
サットン
この時代の新幹線はこの顔ばっかりです。好きも嫌いもない時代が長かったです。それだけに鉄ちゃんは見向きもしなかったんですが・・・。
鉄道ジャーナルとは40年近くも前からの付き合いです。引越しのたびに捨てられそうになりましたが、なんとか手元に残っています。
サットン
実はピクトリアルにはジャーナルより早く出会っています。しかし、奥深ーい記事には小学生はついていけず・・・・。今でも私鉄各社の特集号には手が出ますよ。
サットン
立ち読み派多いと思いますね。それだけ内容が薄っぺらくなっているんでしょうかね。中には各誌まとめて買っていく猛者も見かけますが。
この頃は新幹線=0系の時代でした。たまたまこの号では961系の登場が報じられています。車内には個室寝台なども試作されていました。
サットン
鉄道各誌の棲み分けはおっしゃるとおりかと。ダイや情報は特に独自色が強いですね。それだけに悪質な撮り鉄事件が発生するたびにJRが情報提供を控えたらどうなるんだろうと不安です。
ジャーナルは今のところ大きな動きはないように感じます。バックナンバーを売り急いでいることくらいでしょうか。
サットン
今回の発売元移行でさらに没個性化するのではと不安を感じております。難しい社会派は敬遠される時代ですから。
ネットにはないプロの切り口を見せて欲しいですね。
うたに
鉄道ピクトリアルは、たまに買うのですが。。今度試しに手にとって見てみます。
京葉帝都
仕事で飯田橋界隈を歩いていると偶然RJ社の前を通ったことがありました。小さなビルの一室という感じでした。
新聞も広告取りに躍起になっているので、スペースが空くと、お試し期間と称してリーズナブルに出稿できるのかもしれません。
私はRJは1990年代半ばから2000年迄毎号購入していました。
客観的な視点、タイムリーなテーマ、世界の情報もあったりして、伝統的にコンテンツはバランスが取れています。
今後編集スタンスの変節は無いとは言えませんが。
鉄道の総合誌として大抵の図書館に置かれています。
コアな鉄道ファンは最低RJ、Rファン、Rピクは軽く目を通しているのではないでしょうか。
乗ったり観察したり撮ったりしたシーンを振り返ってみたり、次は何処へ行こうか、と検討する時に雑誌は役に立ちます。
サットン
エッ!意外です。
うたにさんがジャーナル買ったことないなんて!!
サットン
RJ社の入っているビルって日産ビルっていうんですよね。名前だけ聞くと大きなビルを想像してしまいますが。
今回の発売元移行は経営上の判断なんでしょうがやはり然るべき告知を行うべきでしょうね。沈黙しているとあらぬ噂が流布され痛くもない腹をさぐられてしまいますから。新聞も同じ印刷媒体、事情は似たようなものか、雑誌よりも深刻かもわかりませんね。新聞への広告出稿が良い方向に作用してくれることを期待します。
おっしゃるとおりジャーナルは趣味的な視点からのみ鉄道を見るのではなく大所高所から鉄道を捉えている点が評価できると思います。ただ、その点がコアなファンから見れば物足りないということにもなるようで今後趣味的要素の濃い編集方針にシフトするのではと危惧しております。
UZ
私は大学入学後から購入していましたので既に20年弱経過しました。それでも出版元が変更された事は気づきませんでした。部数売り上げの不振、タビテツの休刊と最近のジャーナル社のポリシーが揺らいできているのかなと感じています。
鉄道をベタ褒めしないで様々な視点で断じていく姿勢は今後も大切にしてほしいものです。
サットン
長年の読者でいらっしゃるんですね。沈黙するジャーナルには少々がっかりではないでしょうか。旅鉄の季刊→月刊→休刊というドタバタは迷走するジャーナルを象徴しているように思います。
他の交通機関の情報も積極的に掲載し、鉄道を絶対視しない編集方針がジャーナルの魅力ですね。
haru
でも発売元が移ったということはしばらく廃刊はない?デスカ?
0系の表紙の鉄道ジャーナルいいですねっ
0系の愛らしさが存分に現れています~
サットン
不定期ながらも購読されてるんですね!頼もしいです!
おっしゃるとおり、当面は廃刊なんてないだろうと私も思っています。文句を言いながらなくなると寂しいですからね。良い方向に進んでくれれば良しとしましょう。
新幹線=0系の時代でした。そもそも0系なんて認識もなかったですわ。新幹線は新幹線でした(笑)
きゅんぱち
これは時代の流れからしたら仕方が無いのか?
そうではない(はず)ですよね(笑)。
特にネットで流通している鉄道ネタというのは、いってみれば
「単なる見たまま情報」
なわけじゃないですか?
そういうのは逆にネットに任しちまえばいいと思います。
雑誌が追ってもかなうワケがないですもんね。
活字として残してこそ価値あるネタを追求することがひとつ活路として有効でしょうな。
たとえば、なぜ阪急電車の内装は玄人受けするのか。
それはビスやネジを目につくところに配置しない設計になっているからなんですけど、じゃあどういう構造になっているのか。
関西の鉄道文化にあってはどういう位置づけと考えうるのか。
鉄道各社を口説き落として片っ端から内装風景の比較をやってみるのも面白いじゃないですか、定点観測じゃないけど。
こういうのを探求して掘り下げた記事…。
やはりウケませんかね?(苦笑)
サットン
そうなんですよ!鉄ネタの素材はネット上に氾濫してるんです。そんな中で活字メディアが存在意義を確立するにはその素材をどう料理するか。それには企画力とライターの文章力は不可欠でしょう。何度も読み返したくなる文章こそ活字の命でしょう。最近は経費削減のため安かろうの外部ライターに下請けに出すケースが多いそうですが正に自殺行為ですね。
鉄道に反映された地域文化、私的には非常に興味をそそられます。内装はもちろん、ダイヤ編成や車内放送にまで色濃く反映されていますから。きちんと体系化して記事にすれば面白いですね♪
ドラもん
サットン
読者に対し沈黙するRJ社の姿勢には残念ですね。
とうとう倒産てなデマまで出回る始末です・・・。
たーやん
サットン
遠路はるばるお越しいただきありがとうございます。
ジャーナルの行く末気になりますよね。
私は一応毎号買っていますが読む記事は一部ですね。
かつての栄光を取り戻して欲しいものです。
まるーべり
私は鉄道ジャーナルしか買わないので、鉄道ジャーナルに残ってほしいです。
サットン
私もジャーナルには他誌にない魅力があると思っています。存続のための発売元移行であれば賛成です。社会派鉄道誌のポリシーさえ変わらなければ。