宮脇俊三ファン待望の一冊

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私が鉄道ファンとして、また鉄道を使った旅を愛する者として常に師と仰いでいるのが紀行作家宮脇俊三さんである。私が、宮脇さんの作品と最初に出会ったのは「最長片道切符の旅」(新潮社)である。当時の国鉄路線をいわゆる一筆書きで北海道の広尾から九州枕崎まで最長経路で旅をするという荒唐無稽な旅行記に私は夢中になり、一晩で読み切ってしまった。もちろん、それ以後、繰り返し繰り返し読み返し、私にとっては最高の精神安定剤になっていると言えるほどである。
この他、宮脇さんのデビュー作である「時刻表2万キロ」(河出書房新社)など、その著作のほとんどは読破している。これほどまで私を惹きつける宮脇作品の魅力とは何なのか。それは、けれんみを感じさせない氏の文体ではないかと思う。最近では鉄道作家、或いはそれに似た肩書きで文章を書かれている人は多く存在するが、どうしても自慢話的な作風が見え隠れするのだが、氏の文章からはそうした部分は見出せない。長年、編集者として多くの文章に接して来られたことと、なによりも氏の人柄から滲み出ているものだろう。
さて、先日発売された「小説新潮5月号」では”宮脇俊三と旅する”と題する特集が組まれており早速購入した。もちろん、故人となられた氏は登場しないが、氏が、旅行中書きためたメモや写真などが紹介されている。これらを見ていると氏の存在がより身近に感じられ、また違った視点で氏の作品が読めそうだ。
「最長片道切符の旅」には氏のお二人のお嬢さんも登場するが、長女である灯子さんが父上の思い出を語っているのも興味深い。

なお、「最長片道切符の旅」が復刊されると同時に、この作品の取材ノートを詳細に読み解いた「最長片道切符の旅 取材ノート」も発売されている。
GWにお薦めの一冊である。

「最長片道切符の旅」取材ノート

「最長片道切符の旅」取材ノート

  • 作者: 宮脇 俊三
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2008/04
  • メディア: 単行本

この記事へのコメント

  • 岸田法眼

    最近は本屋で宮脇氏の作品が陳列されておりますね。“鉄道紀行2大巨頭”といわれる1人です。私は追いつけるよう、日々邁進しておりますが、並ぶことができたとしても、超えることはないでしょう。

    鉄道の本でよく目につくのは宮脇氏とブルートレインですね。昨年は“ホットな鉄道ブーム”、今年は“懐古な鉄道ブーム”になりますかどうか?
    2008年04月26日 22:36
  • hajime

    実は、私は宮脇さんの本を読んだことがないのです。
    読んでみようかな。「鉄道廃線跡を歩く」は持っていて、廃線跡旅行の参考にしていますが、代表作を読まないといけませんね。
    2008年04月26日 23:39
  • サットン

    岸田法眼さん

    宮脇さんは、その文章力のみならず、広範な知識に裏打ちされた紀行文は鉄道ファンならずとも魅了されますね。
    脱サラして、好きな鉄道に乗って、本書いて収入になるなんて羨ましいと思ったもんですが、取材ノートには様々な苦労の跡が見られたそうです。
    2008年04月27日 18:50
  • サットン

    hajimeさん

    是非、是非お奨めします!!
    デビュー作の「時刻表2万キロ」、「最長片道切符の旅」が、私は大好きです。「シベリア鉄道9400キロ」も面白いですよ。
    国鉄もソ連もすっかり様変わりして現状とはかなり異なる内容ですが。
    2008年04月27日 18:54
  • HIRO

    こんにちは
    宮脇俊三さんの鉄道シリーズ文庫本全部持っていますが、氏の飾らない正確な沿線紀行にすっかり魅了されて「最長片道の旅」は何十回も読み
    外に出る時も読み、電車に乗っても想像したりで、自分も最長の旅やってみたいと思いました。ぼろぼろになるまで読み二冊目を買いました。

    テレビに出られたこともあり南米ボリビアの高地を登って行く時、自分は肺機能が悪く苦労したお話を聞きましたが、いのちをかけても鉄道にロマンを見出されるひたむきな謙虚な話に感動したことがありました。

    「シベリア鉄道9400キロの旅は当時のソビエトを伝えていて面白いですね。宮脇さん亡きあとは種村さんの本を買いました。
    三人の娘さんの名前にひかり・こだま・あと一人忘れましたが新幹線の名前をつけられた話を聞き鉄道ファンきわまれりと思いました。
    2008年04月27日 19:52
  • サットン

    HIROさん

    宮脇さんのファンでいらっしゃいましたか、嬉しいです。私は勝手にミヤワキストなんて自称しています。
    最長片道切符の旅は秀逸ですね。本当に何度読んでも飽きません。単行本と文庫双方を揃え、旅に出るときは文庫を携え車窓ガイドに使わせていただいています。
    また、文章をヒントに氏が宿泊された宿を探したりしています。
    若いときに肺結核を患われ随分苦労されたそうです。

    種村さんはお孫さんの名前が「のぞみ」だとか。
    2008年04月27日 20:06

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