大山健一車掌を知っていますか

ある国鉄マンの話

今年も年の瀬を迎え忘年会シーズンもそろそろ終ろうとしていますが、毎年この時期になると私はある国鉄マンの名前を思い出します。
その人の名は大山健一さん。国鉄大阪車掌区所属の若き車掌でした。
なぜこの時期に思い出すか・・・・それは大山車掌が図らずもある事故の主人公になってしまったからです。

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▲現在の須磨駅に停車中の下り普通電車

それは、1975年12月27日の夕刻16時前のこと、大山車掌が乗務する西明石行き下り普通電車(267C)が山陽本線須磨駅1番線に到着、当時は電車線を走行していた新快速の通過を退避していたときに起きました。
ホームに立ち2番線の安全監視をしていた大山車掌の目に一人の年配男性客の姿が映ります。時節柄忘年会帰りで酩酊しているのか千鳥足で歩くその乗客は、あろうことか2番線の線路に転落してしまいます。既に新快速は間近に接近しています。そんな切迫した状況の下大山車掌は乗客救護を敢行すべく線路に飛び降ります。もはや乗客をホームに引き上げる余裕はなく、線路とホームとの間のわずかな隙間に押し込み、自らはその上に覆い被さり文字どおり身を挺して護ろうとしたそうです。
しかし、結果は・・・・悲劇に。乗客とともに電車に接触してしまいます。
大山車掌殉職、弱冠25歳でした。

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▲夏の賑わいが嘘のような冬の須磨駅

39年前のこの事故は、大山健一という名とともに私の記憶に深く刻まれることになります。
当時私は多感な年頃といわれる中学生で国鉄マンに憧れていたということもあるのでしょう。しかし、当時の国鉄を取り巻く状況が、この若き国鉄マンの命を賭した行動に一層光を当てたように思います。とにかくこの頃の国鉄は組織としては完全に死に体で現場は荒廃、「たるみ事故」やうっかりミスによるダイヤの混乱が連日マスコミを賑わしていました。中学生である私の目にすらその酷い有様は異常に映っていたほどでした。
そんな中での大山車掌の殉職は私の心を打たずにはおかなかったのだと思います。今の国鉄にこんなに勇敢な職員がまだいたのかと。

◆大山健一顕彰の碑を訪ねる

そんな大山車掌の善行を顕彰する碑が須磨駅近くに建立されていると知り、是非訪ねてみたいと願っていたのですが、命日も近い12月のある日、須磨駅を訪ねることができました。海水浴シーズンには大いに賑わう須磨海岸に面したこの駅も冬場は静かなムードが漂います。駅そのものは事故当時から大きな変化はないと思われますが、新快速が電車線から列車線に移ったので当時のような状況は今ではあり得ません。電車も普通が103系から207・321系に。新快速が153系から223・225系に代替わりしています。

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▲大山健一顕彰の碑

顕彰碑は駅北口を出て線路沿いに大阪方へ2・3分歩いた所にありました。木立の下、線路を往く列車を見守るように立つ碑はフェンスに囲まれているため献花などはできませんが、今も関係者が定期的に訪れているのか花立には花が手向けられていました。
石塔の正面には「大山健一顕彰の碑」の文字。基部には第7代国鉄総裁藤井松太郎名による鉄道顕功賞と宮崎辰雄神戸市長名の花時計賞の碑文が刻まれています。

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▲鉄道顕功賞表彰文

あれから39年、大山車掌が存命なら64歳。既に定年を迎えておられるはずですが、どんな鉄道マンになっておられたのだろうと思いが廻ります。しかし、この間国鉄は消滅し、JRに姿を変え、新会社への移行に際しては現場でも様々な軋轢が生じたと聞きます。大山車掌はこの大波の中でどう翻弄されたのだろうかとも思います。

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▲列車を見守る顕彰碑


◆悲劇を繰り返さないために

国鉄は大きく変化しましたが、変らないのが酔客によるホームからの転落事故です。大山車掌が救助しようとした乗客も御用納めのあと酒席で飲酒しての帰宅途上だったそうです。鉄道会社も忘年会シーズンのこの時期懸命に事故予防を呼びかけますが、JR西日本がお笑い芸人鉄拳さんに依頼した啓発動画が話題を呼んでいます。パラパラ漫画仕立てで「呑んでも家族のことを忘れないで」と訴え、駅や車内のモニターで流されています。

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▲鉄拳作 酔っ払い事故防止啓発動画

さらには転落防止柵も。ドア数も編成両数も異なる列車に対応できる昇降式転落防止柵の実地試験が桜島駅に続いて六甲道駅でも開始されました。須磨駅へ向かう途中にちらりと見てみましたが、その仕掛けよりも十数人のJR社員とガードマンが並ぶものものしい雰囲気に圧倒されました。
転落事故の6割は酔っ払いによるものだとか。心掛けひとつで事故は半減するんですけどね。大山車掌も空の上から苦々しい思いで見下ろしているんじゃないでしょうか。

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▲六甲道駅で試験運用を開始した昇降柵

世の中がどことなく浮かれたムードに包まれる歳末に少々重い内容になりましたが、私としては顕彰碑を訪ねることができて気持ちに一区切り付いた年の瀬となりました。
須磨駅を通られる際にはこんなできごとがあったということを、勇敢な国鉄マンがいたということを思い起こしていただければと思います。顕彰碑は車窓からも目にすることができます。須磨駅大阪方の山側、木立が目印です。

余談になりますが、大山車掌を思い出すとき、漫画「カレチ」(池田邦彦作)の主人公である荻野カレチとイメージがダブってしまうことがあります。荻野カレチが活躍していたのも昭和40年代後半の大阪車掌区ですし、乗客を第一に考え、時には身体をはって乗客の安全を守るという実直な仕事ぶりも共通しているものを感じます。いずれ須磨駅の悲劇も登場するんでしょうか・・・・。

大阪モノレール発車標を更新

ようやく稼働開始



大阪モノレールの各駅に新しい発車標が設置されていることは9月9日付けの記事でお伝えしたとおりですが、12月8日にようやく稼働しているのを確認しました。8月半ばには設置されていましたので、実に4ヶ月を経て灯りがともったわけです。
新発車標はご覧のとおりコンパクトサイズ。発車時刻、行き先、駅番号を表示しただけでキツキツであります。



こちらは門真市駅の降車専用1番乗り場のもの。



旧発車標はお役御免に。


新発車標はLEDの輝度も高くなり、見易くはなりましたが、どうせならもう少しサイズに余裕を持たせられなかったのかなと思います。

以上、大阪モノレール門真市駅からお伝えしました。

京都市バスのラインカラーを見る

路線バス初の(?)本格展開

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京阪バス「山急」で京都駅八条口まで戻って来ました。これから京都駅の地下連絡通路を通って烏丸口のバスターミナルに向かいます。それにしても休日の京都駅は凄い人出ですなあ。

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▲京都駅烏丸口でバス見物

今回の目的は京都市バスが今春から導入した「ラインカラー」を見るためであります。
ラインカラーとは文字どおり、路線ごとにシンボルカラーを決め旅客案内情報を視覚に訴える手法です。鉄道では多くの路線が錯綜する大都市圏の地下鉄などで古くから採用されております。
京都市交通局は「わかりやすい市バス」の実現を目標にデザインマニュアルを策定。その一環としてラインカラーを導入したとか。これほどの大規模バス事業者がラインカラーを採り入れたという例は他には聞いたことがありません。ある意味大掛かりな実験といえるでしょう。

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▲ラインカラーのイメージ

京都市バスの手法としては、市街地を南北に貫く幹線道路のうち6本にラインカラーを設定し、バスや停留所のサインデザインに反映するというものです。
6本の幹線道路とは、西から順に西大路通、千本・大宮通、堀川通、河原町通、東山通、白川通です。ラインカラーは各々の通りに縁のある色を選定しているとか。
それでは各通りごとに見て行きましょう。

◆西大路通
 黄色=金閣寺のイメージ

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方向幕、発車標ともにラインカラーを織り込んだデザインになっています。
系統番号の地色がオレンジは循環系統を表します。循環系統は北行と南行で経由する通りが異なるため途中で方向幕が切り替わります。写真の205系統(時計回り)の場合、北行は西大路通を示す黄色を、南行は河原町通の水色を掲出します。途中北大路バスターミナル辺りで行先共々切り替わるものと思われます。

◆堀川通
 緑=二条城の緑のイメージ

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系統番号が青は一般(均一料金)系統を示します。

◆河原町通
 水色=鴨川のイメージ

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発車標はバスロケーションシステムによる接近情報も表示されています。

◆東山通
 赤=八坂神社・平安神宮のイメージ

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臨時便には「楽洛東山ライン」の愛称が。三十三間堂、清水寺、祇園といった観光スポットを東山通経由で巡ります。

◆白川通
 白=白川・銀閣寺のイメージ

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系統番号が白地は整理券系統を示します。

ところで、この白と、パステル調の水色、緑の色調がメリハリがなく光線の具合によっては識別が難しいと感じました。もっとコントラストを強くする必要があるのではないでしょうか。さらに言えば方向幕の地色全体をラインカラーにしてもよいのではと思います。

◆千本・大宮通
 紫=紫野のイメージ

写真は撮れず。烏丸口に乗り入れるのは206系統だけみたいです。

◆分類されず

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縦横無尽に走れるのがバスの長所とあってラインカラーの定義に収まらない系統も。50系統は堀川通、千本通、西大路通とジグザグコースを進むためかラインカラーは省略されています。


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▲カラフルな案内表示


◆わかりやすい市バス実現のために

デザインマニュアルの命題である「わかりやすい市バス(路線バス)」は京都市バスのみならず、全国のバス事業者、及び利用者にとっても切実なテーマだと思います。
今回訪れた京都駅前に限ってみればバスロケシステムと連動した発車標なども相まって、案内システムは他都市のどこよりも高度に構築されていると感じました。
しかし、観光客でごった返す中、案内係員が終始質問責めにあっていたのも事実です。更なるブラッシュアップが必要です。

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▲バス接近情報にもラインカラー

まず、デザインマニュアルのポリシーを利用者にどう伝えるのか。面倒くさい話ですが、これができなければラインカラーも単なるカラフルなサインになってしまいます。少なくとも市バスのHPトップページからダイレクトにラインカラーの説明にアクセスできなければなかなか浸透しないでしょうね。
その他、京都駅前以外のバス停でどう展開するのか? 市バス以外の民間事業者との連繋はどうするのか? など課題は山積です。
そして素朴な疑問が・・・・LED式の表示機にどう対応させるのか? 長らく幕式を堅持してきた京都市バスも最近はLEDを導入していますから。

「わかりやすいバス」という難解なテーマに正面から取り組み始めた京都市交通局の今後の動きに注目したいと思います。


◆その他諸々

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▲市営交通100周年塗装車

2012年、100周年記念事業の一環で5つの営業所に色違いで1台ずつ配属されたデコレーションバス。これは烏丸営業所所属車でテーマカラーはブルー。

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▲いすゞキュービック

キュービックに久しぶりにご対面。独特のフロントマスクが人気でした。この日も撮りバスさんがデジイチ振りかざして突進して行く姿が見られました。
1995年製のツーステ車のためか予備車的存在になっているようで、この日も臨時便運用に就いていました。


そんなこんなで、秋の一日京都にバスと戯る、全巻の終わりであります。